[解説] Scannerのclose()は必要?

Javaの入門書などで学習中、 java.util.Scanner を使うと次のように表示されることがあります。

リソース・リーク: 'scanner' が閉じられることはありません

これは何

Javaのコンパイラが出す警告で、エラーではありません(無視しても動くといえば動く)。

Scannerは使い終わった後 closeメソッドの呼び出しを期待されています。でも呼び出していないので警告を発しているという状況です。以下のようにcloseメソッドを呼び出すコードを書くと警告は消えます。

Scanner scanner = new Scanner(System.in);
// いろんな処理...
scanner.close();

scanner.close(); は必要?

様々な意見があるかと思いますが、以下の理由でJavaの練習で書くnew Scanner(System.in); に関してはclose()の必要はありません

理由1: close()するとSystem.in ごと閉じてしまう

一度closeしてから再度new Scanner(System.in); してSystem.inを使おうとするとエラーになります。

エラーになるコード

Scanner scanner = new Scanner(System.in);
scanner.close();
// もう一度Scanner使いたい
scanner = new Scanner(System.in);
scanner.nextLine(); // ここで落ちる

実行結果

Exception in thread "main" java.util.NoSuchElementException: No line found
	at java.util.Scanner.nextLine(Scanner.java:1540)
	at Hogehoge.main(Hogehoge.java:15)

System.inは標準入力と言い、Javaのプログラムが入力を受け取るためのデータの通り道のようなものです。eclipseで言うところの「コンソール」とJavaの橋渡し的存在です。

scanner.close(); すると、その橋(System.in)自体の使用をやめる処理が走ります。そしてそのSystem.inは、一度closeするとそのプログラムの実行中はもう一度開くことができません

It is not possible to reopen System.in, System.out or System.err. … it is not possible to reopen them.

Stack Overflow – In Java is it possible to re-open System.in after closing it

プログラムの最後に「作法」としてclose();を書くのは良いことですが(後述)、Javaの練習で書くnew Scanner(System.in); に関してはプログラムの途中でcloseするメリットは無いように思います。

理由2: Javaのプログラム自体の実行終了はclose()を呼んだのと大体同じ

Javaのプログラム自体が終了すると、橋渡しするそのSystem.in含め全てがメモリから破棄されます。練習で書くプログラムは長時間動き続けるものではなく、System.inも自分でcloseしなくても他のプログラムに悪影響はありません。


じゃあclose()書かなくていい?

いいえ、個人的な意見ですが一言で言えば、「new Scanner(System.in); に関しては事実上必要ないが、今後必須の考え方なので書いて練習の機会に」です。

Javaの練習で書くnew Scanner(System.in); に関しては 書かなくても動くといえば動きますが、closeはScannerだけでなくプログラミング全般に通じる考え方, 作法の一つです。そのマインド作り, 練習としてぜひ書いていただきたいと考えます。

Scannerはcloseするべきか について調べると「書くようにしましょう」という文献を見かけますが、この重要な概念を覚えてもらいたいという願いからと思います。


close()の意義

closeは広義には資源を開放して他のプログラムでも使えるようにすることです。

借りたものは返すという作法

「(図書館の本のような)公共のものを借りたら早めに返して他の人も使えるようにする」一般常識はプログラミングの世界でもあり、「借りる」がopen (new Scanner(…);など)、「返す」が close に相当します。

例えばファイルの書き込みで言えば以下のような処理が一般に行われています。

  1. 「自分がこのファイルに書き込むので、終わるまで他のプログラムが書き込めないようロックする」(open)
  2. 「書き込み終わったから他のプログラムも書き込めるようにファイルを開放する」(close)

closeしないとどうなるのか

自分がファイルを使う権利を握り続けるので、ほかのプログラムがいつまで経ってもそのファイルを操作できません。

ファイルに限らず例えばデータベースに接続するプログラムがあるとして、closeしないで放置すると他のプログラムがデータベースに接続できなくなったりシステムの性能が落ちたりします。

Scannerの場合は?

Scannerはキーボード入力を受け付けるSystem.inだけでなく、テキストファイルなど他の入力も扱うことができます。その場合、scannerを使い終わった時点でcloseをすぐ実行するのは作法として適切と言えます。

Scanner scanner = null;
// 必要なtry-catch文は省略しています。
scanner = new Scanner(new File("hoge.txt"));
System.out.println(scanner.nextLine());
scanner.close(); // 使い終わったのでclose
// いろんな処理
// System.inと違い、一度closeしても再度openできる。
// ファイルに読み込みのロックが掛かっていなければエラーにはならない
scanner = new Scanner(new File("hoge.txt"));
System.out.println(scanner.nextLine());
scanner.close(); // 使い終わったのでclose
/*
hogehoge
hogehoge
と出力されます。(hoge.txtには hogehoge と書いてある)
*/