2026年、中古EVが”買い時”に突入か。リース切れ車両が市場を変える理由

2026年、中古EV市場に異変―リース車両の大量流入が始まるか

2023年と2024年、米国ではそれぞれ約120万台、約130万台、合計約250万台のEV(バッテリー電気自動車)が新車として販売された(Cox Automotive調べ)。

このうち約半数がリース契約だった。Experian調査によれば、2024年のEV新車取引に占めるリース比率は約46.6%に達し、Q4には50%を超えた。2023年にはリース契約件数が前年比355%増と急伸しており、リースがEV購入の主流チャネルになりつつあった。

そして今、36カ月の標準的なリース期間が満了を迎え、「ほぼ新車同然」のEVが中古市場に次々と姿を現している。Recurrent Autoによれば、2026年にはリース返却EV台数が前年比230%増になると予測されている。

米国では2025年通年の中古EV販売が378,140台に達し、前年比35.1%増という驚異的な伸びを記録した(Cox Automotive調べ)。2026年1月には31,503台が販売され、前年同月比21.2%増、前月比20.8%増。市場シェアは2.1%に達し、もはや無視できない存在だ。

注目すべきは在庫回転のスピードだ。中古EVの在庫日数はわずか43日。ガソリン車やハイブリッド車(ICE+)を10カ月連続で下回り続けている(Cox Automotive「EV Market Monitor – January 2026」)。つまり、中古EVの方が早く売れているのだ。

リース満了車両の大量流入は、市場全体の価格構造を変え、EV普及の次なるステージへの扉を開く転換点といえる。

価格破壊が進行中―ガソリン車とほぼ同額に

中古EV市場で静かに進行しているのが「価格パリティ(同等化)」だ。2026年1月、中古EVの平均掲載価格は35,442ドル(約550万円)。前年比5.1%減、前月比2.5%減と下落傾向にある。

そして注目すべきは、ICE+との価格差がわずか1,376ドル(約21万円)にまで縮小したことだ。2025年12月の2,591ドルから大幅に縮小した。もはや「EV=高い」という常識は、中古市場では通用しなくなっている。

さらに興味深いデータがある。Recurrent AutoのQ1 2026レポートによれば、2万ドル(約310万円)以下の価格帯では、同価格帯のガソリン車と比べて中古EVは平均で2年新しく、走行距離が40,000マイル(約6.4万km)も少ない。同じ予算でより新しく、より走行距離の少ない車が手に入るのだ。

中古EV在庫の56%が3万ドル以下で、全体の55%が2023年式以降という新しさだ(Recurrent Auto調べ)。ミシガン大学が2026年1月に学術誌Environmental Research Lettersに発表した研究によれば、3年落ちの中古BEVは燃料費や維持費が低いため、長期保有した場合の総保有コスト(TCO)が新車を含む他のどのパワートレインよりも低くなる。ただし、年間走行距離が多い人ほどこの節約効果は大きくなる。EVにはスパークプラグ、エンジンオイル、タイミングベルトが不要で、オイル交換も必要ない。ただしバッテリーやモーターの冷却システム(熱管理システム)は存在するため、メンテナンスがゼロになるわけではない点には留意したい。


テスラだけじゃない。注目の中古EVモデルと相場感

中古EV市場でテスラは全体の約30%を占める(Recurrent Auto調べ)。2026年1月時点の人気Top4は以下だ。

  • Tesla Model 3 – 平均26,756ドル(約415万円)、シェア13.74%
  • Tesla Model Y – 平均32,712ドル(約510万円)、シェア9.33%
  • Tesla Model S – 平均39,873ドル(約620万円)、シェア3.92%
  • Tesla Model X – 平均48,385ドル(約750万円)、シェア2.38%

テスラ以外では、フォルクスワーゲンID.4、日産アリア、Ford Mustang Mach-Eも在庫が充実している。特に日産リーフは年式によっては1万ドル前後から見つけることができ、同程度の価格帯のガソリン車より新しい年式が手に入る場合がある。40kWhモデルの航続距離はEPA基準で149マイル(約240km)で、日常の通勤や買い物には十分な性能を持つ。

なお、日産リーフはCHAdeMOポートを通じた双方向充電(V2H)に技術的に対応しているが、米国では対応する双方向充電器(Fermata Energy FE-20など)がまだ限定的であり、日本のように住宅への電力供給を手軽に行える環境は整っていない点には留意が必要だ。

LFPバッテリー搭載車が狙い目―劣化リスクが低い新世代EV

中古EV選びで重要なのがバッテリーの種類だ。LFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーは、一般的なNMC(ニッケル・マンガン・コバルト)バッテリーがセルレベルで約1,500〜2,000サイクルで80%容量に達するのに対し、約4,000サイクルまで持つ。実車のバッテリーパックとしての性能は個々のセルの弱さに依存するため数字は下がるが、それでもLFPはNMCの2〜3倍の寿命があるとされる(Recurrent Auto調べ)。

Recurrent Autoの調査では、2022〜2023年式テスラを対象にLFPとNMCを比較したところ、LFPの方が劣化が遅いという予備的な結果が得られている。LFPバッテリー搭載の代表的なモデルには以下がある。

Tesla Model 3 RWD:中国製LFPバッテリーを搭載。2024年10月、バイデン政権による中国製EVバッテリーへの関税引き上げ(7.5%→25%)を受け、米国での販売を終了した。中古市場ではまだ流通している。

Ford Mustang Mach-E:2023年春のモデル更新以降、スタンダードレンジ(ベーシック)トリムに73kWhのLFPバッテリーを搭載している。

Rivian R1S / R1T:スタンダードバッテリーモデルに92.5kWhのLFPバッテリーを採用している。

LFPは熱暴走リスクが低く安全性が高い。高温にも強く、満充電での保管による劣化も少ない。中古購入時の「バッテリー劣化リスク」が相対的に低い点で、長期的に安心して乗れる選択肢として検討する価値があるだろう。

日本でも”中古EV元年”は来るのか?

『日経トレンディ』2025年12月号の「2026年ヒット予測100品目」では、中古EVがベスト30の第2位に選ばれた。また、日本総合研究所は2025年10月に「EV電池サーキュラーエコノミー白書」を発表し、中古EVの市場動向と課題を詳細に分析している。日本でも新車EV販売が2022年以降増加傾向にあり、リース契約の多くが満了を迎える2026年に中古市場へ一定数が流入すると予測されている。

経済産業省は蓄電池のトレーサビリティやデータ連携基盤の整備を推進しており、2025年7月にはオリックス自動車、EVolity、パナソニックHDの3社が共同で実証実験を開始した。この実証では、オリックス自動車が実施する中古車の入札会において、EVバッテリー診断書を付与した車両を出品し、入札価格(残存価値)への影響を2026年3月まで検証している。バッテリーの健全性が可視化されれば、消費者の「劣化の不透明さ」という不安を解消する鍵となりうる。

ただし大きな課題もある。日本総研の試算では、2024年までに国内で発生した約11万台の中古EVのうち、約83%が海外に輸出された。中古EVの大半が国外に流出している現実がある。国内でバッテリー資源を循環させる仕組みの構築が急務だ。

それでも、2026年は中古EV市場にとって転換点になる可能性がある。複数の市場調査会社は中古EV市場の年平均成長率を高い水準で予測しており、たとえばGM Insightsは7.9%、Knowledge Sourcingは29.8%、Future Market Insightsは8.4%と予測している(対象期間や定義により幅がある)。リース返却車両の増加、バッテリー診断書の普及、新車モデルの世代交代。これらが重なるタイミングが、まさに2026年なのだ。


本記事のデータ出典:Cox Automotive「EV Market Monitor – January 2026」、Recurrent Auto「Q1 2026 Used EV Market Report」、ミシガン大学(Environmental Research Letters、2026年1月27日)、Experian「State of the Automotive Finance Market Report: Q4 2024」、日本総合研究所「EV電池サーキュラーエコノミー白書」(2025年10月)、日経トレンディ2025年12月号、オリックス自動車・EVolity・パナソニックHD共同プレスリリース(2025年7月11日)。内容は2026年2月時点の情報に基づいています。


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投稿者 koki