最初に知っておきたいこと:EVはやめとけと言われる背景
都市部在住で週末の郊外ドライブを楽しみ、年に数回の長距離旅行を検討している方に向けて書きます。SNSやネット掲示板で見かける「EVやめとけ」という声には、単なる偏見ではなく、実際に購入後に直面した課題や想像以上の出費に基づく経験談が混ざっています。2025年8月現在、私が取材を重ねる中で見えてきたEVの現実を、正直にお伝えします。
結論から言うと、用途と予算の見極めができれば、EVは快適な選択肢になり得ます。ただし、準備不足で購入すると確実に後悔するポイントがいくつかあるのも事実です。数分で読める内容にまとめましたので、お付き合いください。
EVの現実的な課題:なぜ「やめとけ」と言われるのか
充電インフラの地域差という現実
2025年7月末時点で、日本国内のEV充電スタンド数は25,975拠点となりました。GoGoEVの最新データによると、6月末から68拠点の増加と順調に見えますが、地域差は依然として大きいのが現状です。2025年3月時点では約6.8万口の充電器が整備されており、前年から約2.8万口増加したものの、都市部の充電器密度と地方の格差は解消されていません。
私が実際に地方を回って感じるのは、高速道路のサービスエリアには設置が進んでいるものの、一般道での選択肢がまだ限られることです。特に出力の高い急速充電器は偏在しており、150kW以上の高出力機は主要都市圏に集中している状況です。地方での長距離移動を頻繁に行う方には、まだストレスを感じる場面があるかもしれません。
バッテリー交換費用の現実
これも多くの人が「やめとけ」と言う理由でしょう。バッテリー交換費用は車種によって大きく異なりますが、実際の相場を見てみましょう。日産リーフの場合、約80万円から100万円程度とされており、車両本体価格の約3分の1に相当します。EV-Bookingの調査によると、この費用は決して安くありません。
ただし、多くのメーカーが8年・16万km程度の保証を設定しており、保証期間内であれば無償交換の可能性があります。問題は保証期間を過ぎた後の話です。海外の事例では、バッテリー1kWhあたり137ドル程度が相場とする調査もあり、60kWhクラスのバッテリーなら約100万円程度の計算になります。intensive911

冬季性能の著しい低下
寒冷地での航続距離低下は、多くのEVオーナーが実感している課題です。国際的な実験データによると、極度の低気温時にEVの航続距離が16-46%減少することが確認されています。WIREDの記事によると、ただし極寒下ではガソリン車の燃費も15-24%低下するとのことです。中国で行われた寒冷地テストでは、カタログ値の4-5割まで航続距離が短縮したケースも報告されています。日経ビジネス
私が北海道での取材で経験したのは、予定していた充電スポットで想定以上に時間がかかったケースです。低温時は急速充電の受け入れ出力も下がるため、夏場なら30分で済む充電が1時間近くかかることもありました。寒冷地在住の方や、冬場の長距離移動が多い方には、この点を十分考慮していただきたいです。
中古車市場での価値下落
EVの中古車価値は、従来のガソリン車以上に不安定です。新車価格の見直しや技術革新のペースが早いことで、中古市場での価格下落が激しくなる傾向があります。特にリース期間満了車の大量放出時期には、相場が大きく動くことがあります。
実際に、ある軽EVモデルでは新車価格が大幅に引き下げられた際、中古車価格も連動して下落し、既存オーナーの下取り価格に影響を与えたケースもありました。長期保有を前提としない場合、リセールバリューのリスクは考慮しておくべきでしょう。
それでも後悔しないための対処法
用途と仕様の慎重なマッチング
EVで失敗しないための最重要ポイントは、自分の使い方と車両仕様の適合性を正確に把握することです。週の走行距離が200km以下で、自宅に充電設備を設置できるなら、EVの恩恵を享受できるかもしれません。逆に、毎日100km以上の長距離通勤や、頻繁な寒冷地での長距離移動がある場合は、慎重な検討が必要です。
重要なのは、カタログ航続距離の70-80%を実用航続距離として考えることです。冬場や高速走行では、さらに20-30%の余裕を見込んでおくと安心です。
充電環境の事前確認
購入前に必ず行うべきは、生活圏と移動ルートの充電インフラ調査です。自宅、職場、よく利用するショッピングセンター、高速道路のサービスエリアなど、充電可能な場所を地図上でマーキングしてみることをお勧めします。
また、急速充電器の出力も重要な要素です。30kW程度の出力では充電時間が長くなるため、可能であれば50kW以上の充電器が複数ある環境を選びたいところです。最新の高出力充電器(150kW以上)が近くにあれば、充電時間を大幅に短縮できます。
購入時期と補助金活用
2025年度のCEV補助金は、車両価格や性能に応じて補助が受けられます。EV DAYSによると、EV(普通車)が最大90万円、小型・軽EVは最大58万円となっています。次世代自動車振興センターのサイトなどで最新情報を確認し、自治体の上乗せ補助と合わせて活用することもできます。
ただし、補助金の予算には限りがあり、予算消化状況によっては年度途中で終了する可能性もあります。購入を検討している場合は、早めの申請をお勧めします。
2025年の最新動向:改善の兆し
技術革新による課題解決
バッテリー技術の進歩で、劣化耐性や低温性能が着実に改善されています。最新のリン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LFP)を採用したモデルでは、従来比で20-30%長い寿命が期待されています。また、ヒートポンプ式暖房システムの採用で、冬季の電費悪化も従来より抑制されています。
充電技術も進歩しており、800V系のアーキテクチャを採用した車種では、200kW以上の超高速充電に対応し、10-80%の充電時間を20分程度まで短縮できるモデルも登場しています。
インフラ整備の加速
政府は2030年までに公共充電器を30万口まで拡充する目標を掲げています。経済産業省によると、特に高出力充電器の設置が優先的に進められており、2025年内にも主要路線での充電待ち時間は大幅に改善される見込みです。
結論:やめとけは本当か?賢い選択のポイント
「EVやめとけ」という声は、決して根拠のない批判ではありません。充電インフラの地域差、バッテリー交換費用の高さ、冬季性能の低下、中古車価値の不安定さなど、実際に存在する課題から生まれた声です。
しかし、これらの課題は適切な準備と理解があれば十分に対処可能です。重要なのは、自分の使用環境とEVの特性を正確に把握し、ミスマッチを避けることです。都市部での短距離中心の使用で、自宅充電環境があるなら、EVは優れた選択肢になります。
一方で、寒冷地での長距離移動が頻繁な方や、自宅充電環境を整備できない方には、現時点ではまだハードルが高いかもしれません。ただし、技術革新とインフラ整備は着実に進んでおり、数年後にはこれらの課題も大幅に改善される可能性が高いです。
最終的には、現在の技術水準と自分のライフスタイルを冷静に比較し、無理のない範囲での導入を検討することが大切です。EVは確実に進歩している技術ですが、まだ完璧ではありません。その現実を理解した上で、賢い選択をしていただければと思います。
この記事は執筆時点で得られた情報に基づいています。内容は正確性に配慮していますが、正確性を保証するものではありません。実際の最新の情報は別途ご自身でご確認ください。