「EVに車検はない」は大きな誤解
「電気自動車(EV)に車検はない」と思い込んでいる方、意外に多いのではないでしょうか。実際のところ、EVも従来のガソリン車と全く同じように車検が必要なんです。
2024年、国内でEVは約34,000台が新規登録されています。しかし、この数字の裏には「EVの車検ってどうすればいいの?」と戸惑っているオーナーがたくさんいるのが現実です。実際、全国の自動車整備工場のうち、EVの車検を実施している工場は44.0%にとどまっているという調査結果もあります。
つまり、EVだからといって特別扱いされるわけではないものの、工場選びを間違えると思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があるということです。今回は、EV特有の車検事情を知り尽くした立場から、絶対に押さえておくべき3つのポイントをお伝えします。
1. EV対応工場を見極める3つのチェックポイント
EVの車検で重要なのは、適切な整備工場を選ぶこと。専門的な知識と設備が必要です。
チェックポイント1:EV専用診断機器の有無
バッテリーマネジメントシステム(BMS)の診断には、専用のスキャナーが必要です。「EV専用の診断機器はありますか?」と直接聞いてみましょう。
チェックポイント2:過去の実績
ディーラー以外の整備工場の場合、工場によってはEVの車検に対応できない場合があります。EVに特化した点検項目や安全に関する知識が必要なため、EVの整備に対応している工場であるか確認しておくことが重要です。
「これまでにどのくらいのEV車検を手がけていますか?」と聞いてみることをおすすめします。経験豊富な工場なら、具体的な事例を交えて説明してくれるはずです。
ちなみに、メーカー直営のディーラーなら、EV専用の点検設備が整っていることが多いので、最も安心できる選択肢といえるでしょう。ただし、費用は民間工場より高くなる傾向があります。
2. バッテリー診断を軽視してはいけない理由
EVの「心臓部」であるバッテリーの状態チェック、これを軽視する人が意外に多いんです。「車検が通ればそれでいい」と思っていませんか?それは大きな間違いです。
バッテリーの劣化は航続距離の減少に直結します。そして、もしバッテリー交換が必要になったら、費用は数十万円から場合によっては100万円を超えることもあります。だからこそ、車検時にしっかりとした診断を受けることが重要なんです。
見逃しやすいバッテリー劣化のサイン
私がこれまで見てきた中で、多くの方が見逃しがちなサインがあります。
充電完了後の航続距離表示が購入時より明らかに短くなった場合、これは典型的な劣化サインです。また、充電速度が以前より遅くなったり、極端に暑い日や寒い日に航続距離が大幅に短くなる現象も要注意です。
特に中古EVを購入した方や、購入から3年以上経過している車両では、必ずバッテリーの詳細診断を依頼しましょう。診断結果によっては、保証期間内であれば無償交換の対象となる場合もあるため、適切な診断は長期的なコスト削減にもつながります。
3. エコカー減税を活用する
ここからが「知らないと損する」部分です。EVの車検費用を削減できるエコカー減税制度、あなたはちゃんと理解していますか?
2026年4月30日まで延長されたこの制度により、EVは新車登録時と初回車検時の自動車重量税の優遇措置があり、車検費用の節約につながります。
この点についても、整備業者さんに詳しい説明を聞くとよいでしょう。
2024年10月から始まったOBD検査の影響
最近の車検で新たに加わった「OBD検査」についても触れておきましょう。2024年10月から国産車、2025年10月からは輸入車を対象に、この検査が車検項目に追加されました。
OBD検査は車載式故障診断装置を活用した検査で、EVも当然対象となります。車検時に電子制御システムの故障コードがチェックされるようになりました。
この検査でバッテリーマネジメントシステムや電動モーターの制御系に問題がある場合、車検が不合格になる可能性があります。つまり、従来以上に定期的なメンテナンスとシステム診断が重要になっているということです。
車検前に準備しておきたいこと
EV車検を成功させるために、事前準備も大切です。
車検前日にはバッテリーを充電しておきましょう。「車検当日にバッテリー切れで慌てる」なんて恥ずかしい思いをしないよう、余裕を持った充電スケジュールを組むことが重要です。
また、車検証、自賠責保険証明書、印鑑といった必要書類の準備も忘れずに。EVの点検項目について不安がある場合は、事前に整備工場に相談しておくと安心です。「初めてのEV車検で不安なんです」と正直に話せば、丁寧に説明してくれるはずです。
まとめ:知識があるかないかで差が生まれる
EVの車検は、適切な知識を持って臨めば従来車よりもコストを抑えることができます。しかし、知識不足で工場選びを誤ると、思わぬトラブルや高額な費用に見舞われる可能性があります。
今回お伝えした3つのポイント――EV対応工場の選定、バッテリー診断の重要性、エコカー減税の活用――を押さえると良いかもしれません。
特にエコカー減税の恩恵は2026年4月30日までの期間限定です。今のうちに制度を理解することをおすすめします。
EVは環境に優しいだけでなく、維持費の面でも多くのメリットがある乗り物です。正しい知識を身につけて、賢くお得なEVライフを送りましょう。
よくある質問
Q: 電気自動車にも車検は必要ですか?
A: はい、電気自動車も従来のガソリン車と同様に車検が必要です。新車購入から3年後に初回車検、その後は2年ごとに継続車検を受ける必要があります。
Q: どこでも電気自動車の車検は受けられますか?
A: いいえ、全国の自動車整備工場のうち、EVの車検を実施している工場は44.0%にとどまります。EV専用の診断機器や高電圧車両の整備資格を持つ工場を選ぶことが重要です。
Q: 電気自動車のエコカー減税はいつまで適用されますか?
A: 電気自動車のエコカー減税は2026年4月30日まで延長されています。新車登録時と初回車検時の自動車重量税が100%免税となります。
Q: 電気自動車のバッテリー診断は車検で必要ですか?
A: バッテリー診断は車検の必須項目ではありませんが、劣化状況を把握し将来的な高額交換を避けるために強く推奨されます。専用のスキャンツールが必要なため、対応可能な工場を選ぶことが大切です。
この記事は執筆時点で得られた情報に基づいています。内容は正確性に配慮していますが、正確性を保証するものではありません。実際の最新の情報は別途ご自身でご確認ください。
